景品表示法入門 ~「不当な表示」について~

◎景品表示法とは?

景品表示法は、「取引に関連する不当な景品類及び表示による不当な顧客の誘引の防止」及び「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止」することで、「一般消費者の利益を保護すること」を目的に制定された法律です。

まず、景品表示法(正式名:不当景品類及び不当表示防止法)において保護されている「一般消費者の利益」について考えていきましょう。

「一般消費者の利益」で、景品表示法上で特に関連が深いのは、消費者の「知らされる権利」と言われています。
より質が高く、価格が安い商品・サービスを求める消費者は、購入をする際にその情報たる「表示」を判断材料にして購入を決定することがおおよそ一般的です。しかし、その表示は事業者から消費者に一方的に提示されるものである性質上、購買する消費者側はそれが正しい表示なのか判断するのに情報的な限界があります。商品・サービスに不当な表示があった場合、弱い立場にある消費者の存在を同法が保護することで、消費者が適切な選択を行える意思決定環境(知らされる権利)が守られているのです。

また、本来、事業者は一般消費者の期待に応えるために、商品・サービスの質を向上させていく・価格を安くしていくなどして競争を繰り返します。そしてそれが健全な市場の発展といえますが、過大な「景品(おまけ)」が提供される商品・サービスなどが市場にあった場合、消費者が景品の多寡によって商品・サービスを選ぶようになるため、市場に公正な競争が生まれなくなってしまいます。「事業者が公正に競争できる環境」であるためには、一部の事業者が消費者の無知や不合理につけ込むことのない状態が不可欠です。そこで同法が不当な景品を規制することで、健全な市場競争(商品の質の向上、価格の競争)という消費者の利益を保護しているという側面もあります。

◎景品表示法の概要図


◎「表示」とは

さて、上述した禁止されている「不当な表示」とはなんのことを指すのでしょうか。まずはその前に「表示」の定義から考えていきましょう。

<表示の定義>

「表示」とは、顧客を誘因するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するものをいう。(不当景品類及び不当表示防止法第2条第4項抜粋)
⇒つまり消費者に知らせる広告や表示全般を指しています。

<具体例>

・チラシ、パンフレット、カタログ
・容器、パッケージ、ラベル
・ダイレクトメール、ファクシミリ広告
・ディスプレイ(陳列)、実演販売

・新聞、雑誌、出版物、TV/ラジオCM
・ポスター、看板
・セールストーク(訪問・電話)
・インターネット上の広告、メール等

上述の通り、「表示」は世の中の商品・サービスの中と切っても切り離せないものであり、当然SS運営においても販売、そして販売戦略の中で大きく関わってくるものです。次からは例とともに「不当な表示」とはなんなのか考えていきましょう。

◎「不当な表示」とは

「表示」は消費者が商品・サービスを選ぶ際の重要な判断材料になりますので、その表示は消費者に正確に伝わる必要があります。ところが、この商品・サービスの品質や価格について記された表示が実際よりも著しく優良又は有利と見せかけられていたり、事実と反して他社の商品より優れていると見せかけられていると、消費者の適切な商品・サービスの選択が妨げられてしまいます。「不当な表示」とは、一般消費者に商品・サービスの品質や価格について、実際のもの等より著しく優良又は有利であったり、実際のものと違うものと誤認を与えるような表示のことをいいます。景品表示法では、消費者保護の観点から、消費者に対して、不当に顧客を誘引し、消費者の自主的・合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるこれらの表示を「不当な表示」として禁止しています。

なお、同法に違反する不当表示については、事業者側に故意・過失がなかったとしても、同法に基づく措置命令が行われることとなります。

「不当な表示」は大きく分けて以下の3つの種類があります。



禁止されている「不当な表示」の種類
①優良誤認 ②有利誤認 ③その他

▶ ①優良誤認表示

優良誤認表示とは、一般消費者に対して、品質、規格、その他の内容について、実際のものより、著しく優良であると表示すること。また、事実に相違して他の競合業者より著しく優良であると表示することを指しております。

SSで関係ある優良誤認表示の例と致しましては、以下が挙げられます。

・車検について「入庫から30分で乗ってお帰り頂けます」と表示していたが、実際には30分で終了するケースがほとんどなかった。
・中古車販売にて、メーターを巻き戻し、実際の走行距離を過少に表示していた。
・自動車用品に関し、「合理的な根拠※」が無いにもかかわらず、燃焼率向上による節約効果を表示していた。等
※優良誤認表示か否かの判断は、「合理的な根拠」があるか否かによる。
その基準は、「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運営指針-不実証公告規制に関する指針-」(平成15年10月28日)にて定められている。

▶ ②有利誤認表示

有利誤認表示とは、一般消費者に対して、商品・役務(サービス)の価格や取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると表示すること。また、他の競合業者より取引の相手方に著しく有利であると表示することを指しております。

SSで関係ある有利誤認表示の例としましては、以下が挙げられます。
・車検の広告で「車検料金10,000円ポッキリ」と表示していたが、実際には、別途消費税を請求にしていた。
・車検の広告で「市内最安値」と表示していたが、実際は他の業者が安かった(合理的な根拠が無かった)。よって価格条件を不明瞭に表示したため、一般消費者に実際のものより著しく有利であると誤認される疑いがあるとみなされた。
・価格条件を不明瞭に表示したため、一般消費者に実際のものより著しく有利であると誤認される疑いがあるとみなされた。

▶ ②有利誤認表示~SSでのケースについて~

SSにおける「表示」において、有利誤認表示となる恐れのあるケースを想定して以下に掲載しました。



<有利誤認表示となりかねない例>


①割引価格条件(会員、プリペイドカード)を小さく(不明瞭)に表示

②「地域最安値!」と表示していたが、実際には、調査をしておらず、実は他社より割高


※価格表示は「条件」を明確・明瞭にし、必ず消費税を含んだ「総額表示」を記載してください


▶ ③その他(不当な表示)


上述した①優良誤認表示・②有利誤認表示の他に、「内閣総理大臣が指定する不当な表示商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定する」表示についても不当な表示として指定され、禁止されています。

上述した①②は、実際の商品・サービスとは著しく異なり、消費者に不利益を与えると明らかに判別できるものであるため、直ちに規制されるべきものとして、同法で規制されています。しかし、複雑な経済社会において、一般消費者の自主的かつ合理的な商品又はサービスの選択を妨げる表示にこれだけでは十分に対応することができない場合があると考えられるため、その他の「指定表示」を設けてこれを補完しております。

なお、同法の運用機関である消費者庁の主任の大臣たる内閣総理大臣に、不当表示を指定する権限が付与されています。

その他誤認されるおそれのある表示として、以下6つの指定表示が挙げられます。

1.無果汁・無果肉若しくは果汁又は果肉の量が5%未満の清涼飲料水、乳飲料、アイスクリームなどについて、「無果汁・無果肉」であること又は果汁若しくは果肉の割合を明瞭に記載しなかった場合、果実名を用いた商品名、果実の絵、又は図案の表示が不当表示となる。(昭和48年3月20日公正取引委員会告示第4号)

2.一般消費者が原産国を判別することが困難な場合、その商品の原産国以外の国名・地名・国旗・紋章、その商品の原産国以外の事業者又はデザイナーの氏名、名称又はその商標の表示、文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示が不当表示となる。(昭和48年10月16日公正取引委員会告示第34号)

3.消費者信用の融資費用について、実質年率が明瞭に記載されていない場合、アドオン方式による利息、手数料その他の融資費用の率の表示。日歩、月利など年建て以外による利息、手数料その他の融資費用の率の表示。融資費用の額の表示、返済事例による融資費用の表示、融資費用の一部についての年建てによる率の表示が不当表示となる。(昭和55年4月12日公正取引委員会告示第13号)

4.不動産の取引において、消費者を誘因する手段として行う以下の表示は不当表示となる。
・取引の申し出に係る不動産が存在しないため、実際には取引できない不動産についての表示
・取引の申し出に係る不動産は存在するが、実際には取引の対象となり得ない不動産についての表示
・取引の申し出に係る不動産は存在するが、実際には取引する意思がない不動産についての表示(昭和55年4月12日公正取引委員会告示第14号)

5.一般消費者を誘因する手段として行う以下の表示は不当表示となる。
・取引の申し出に係る商品・サービスについて、取引を行うための準備がなされていない場合のその商品・サービスについての表示
・取引の申し出に係る商品・サービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品・サービスについての表示
・取引の申し出に係る商品・サービスの供給機関、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品・サービスについての表示
・取引の申し出に係る商品・サービスについて、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品・サービスについての表示(平成5年4月28日公正取引委員会告示第17号)

6.有料老人ホームの施設・設備、サービスについての以下の表示は不当表示となる。
・入居後の居室の住み替えに関する条件などが明瞭に記載されていない表示
・介護サービスを提供するのが有料老人ホームでないにもかかわらず、そのことが明瞭に記載されていない表示
・夜間における最小の介護職員や看護師の数など、介護職員などの人員数が明瞭に記載されていない 等…

◎最後に

企業コンプライアンスが重視される昨今、皆様方においては景品表示法について重々把握されている方が大多数でいらっしゃるかと思います。本記事はまさに釈迦に説法のようで大変恐縮ではございましたが、今回は「不当な表示」にフォーカスを置いた入門編ということで、景品表示法を基本からおさらいしておりますので、これを一読することで皆様がいちから景品表示法を再認識する、そしてその理解を深めて頂く一助にでもなれば幸いと考えております。

機会がございましたら、景品表示法に限らず、その他の業法についても掲載していきたいと思いますので、今後とも宜しくお願い致します。

◎参考

消費者庁/表示対策課
公正取引委員会
(一社)全国公正取引協議会連合会

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